2017年9月21日木曜日

映画It/イット 2017年リメイク版をフランスで見てきました。





スティーブン・キング原作の名作ホラーTVドラマ「It/イット」のリメイク版を見てきました。フランスではいち早く、今日から上映開始です。あの殺人ピエロが再び帰ってきました。フランス語版のタイトルは「Ça (サ)」です。イット以上に短い!
1990年のトミー・リー・ウォーレス監督のTVドラマ版を、「MAMA」の監督アンディ・ムスキエティが映画化しました。

この作品は、自分のお気に入りホラー映画ベスト3に入る作品なので、不安と期待が入り混じる気持ちで見に行きました。
自分は前作は幼稚園くらいのときに、レンタルビデオ店で借りて見ました。しかし、映画を見た後、夢の中に殺人ピエロが出て来ました。自分が住んでいた団地で襲われた記憶が今でも残っています。そんなトラウマゆえに、イットをダビングしたビデオテープを封印し、高校生くらいのときに再び見たのを覚えています。

<作品構成>
旧作は、前後編の2部構成となっており、前半が主人公たちが子供のときの話、後編が大人になってからの話に分かれており、後編で子供の時のトラウマに、再び立ち向かうという熱いシナリオになっています。今回のリメイク版でも、この構成はキープされています。前情報を全く仕入れずに見に行ったので、「It」といいうタイトルだけを見たとき、前編・後編の記述がなく、上映時間も2部構成にしては2時間15分と短かったため、視聴前はかなり不安に思っていましたが、映画のエンディングロールの頭に「前編」と表示されて安心しました。前編2時間15分ということは、前作と比べてかなりボリュームが増えているようです。

<前作との大まかな描写・設定の違い>
今作では、いろいろ描写が前作と変わっています。

■前作では残酷描写はほとんどありませんでしたが、映画開始早々に主人公の弟のジョージーの腕が食いちぎられる描写が入ります。子供の腕が食いちぎられるというショッキングな内容なので、国によってはNGな映画になるかもしれません。

■ピエロのペニーワイズも、前作と違い、とても素早く動きます。前作と同様、子供が恐れるいろいろな姿に化けて出てきますが、具体的にトランスフォームするシーンなどの描写が加えられています。ただ、The CGという感じの描写が、子供だましに感じるのか、フランス人は映画を見ながら苦笑していました。あとは最近のアメリカのホラー映画によくある、ビックリ箱的な、急に大きな音が鳴り何かが出てくるという演出も多分に使われています。これに対しても、フランス人は苦笑していました。

■全体的に、前作よりも、より説得力のある設定や描写が追加・変更されています。
例えば、主人公たちがペニーワイズと闘う時の武器です。前作では、喘息用のスプレー状の薬を「酸だ!」といってペニーワイズに吹きかけたり、パチンコの玉を食らっただけで、頭部に穴が開くなどの設定がありましたが、今回は家畜を殺す用の銃や鉄柵の一部を武器として使用して、ペニーワイズをみんなでタコ殴りにします。確かに現実的には、喘息の薬やパチンコの玉で、こんな怪物にダメージを与えられるわけがないのですが、これについては、ペニーワイズは子供の心に応じて強くなったり弱くなったりするという設定で前作はカバーされていました。子供が恐れれば恐れるほどペニーワイズは強くなり、逆に恐れなければ、パチンコの玉でも倒せるくらい弱くなるわけです。この設定は、主人公たちが精神的に強くなる過程を描写する上で重要になっているのですが、今回はその設定が弱くなっているのが、やや残念です。銃や鉄柵のパイプで串刺しにして倒せない敵を、後編では一体どうやって倒すのでしょうか?気になります。

■前作では、ペニーワイズが化ける対象として、オオカミ男が出てきましたが、さすがに最近の観客にオオカミ男を出しても、”ぽかん”とされるだけなので、このキャラクターはもっと得体のしれないサイレントヒルに出てきそうなクリーチャーに変更されています。あと、絵の中から飛び出してきた、顔が崩れた不気味なおばあさんのキャラクターも印象的でした。他にもバイオハザードやウォーキングデッドっぽいゾンビや、The Ringのサマラっぽいペニーワイズも出てきます。どうも、最近のいろいろなホラー映画のキャラクターをいろいろ取り入れているようです。それが昔はオオカミ男でしたが、これらのキャラクターは現代の人々がホラー映画のクリーチャーとしてイメージするものなのでしょう。時代の違いを感じます。

■ペニーワイズのアジトもCGをふんだんに使い、スケールアップされています。

■前作では下水処理施設(?)に主人公たちが乗り込む描写がありましたが、今回はWellhouse(井戸小屋)と呼ばれる、家の中に井戸がある廃墟に乗り込みます。この井戸は以下の下水道と繋がっています。そして、井戸があるということで、少し「リング」を意識した描写が映画の一部で使われています。

■ペニーワイズ自身は、役者も見た目が若くイケメンっぽい人がやっていて、あまり不気味さを感じない気がしました。昔のティム・カリーの方が、何となく得体が知れない不気味さがあります。今回は、中身イケメンのピエロが、素早い動きで攻撃してくるというスタイルで、精神的な怖さというよりは、物理的に危険という点で怖い感じがします。このキャラクターで、現代の子供の心にトラウマを植え付けることはできるのか?

■ペニーワイズの出現周期が30年から27年になっていたのは、何かしら過去の設定に問題があったのだろうか?主人公たちの年齢設定をミスったとか?

<ストーリー上の違い>
バウワーズ率いる不遼組も出てきますが、前作と違い、バウワーズはペニーワイズにそそのかされ、警官である父親を殺すシーンが追加されています。

あと、前作と違いベバリーが父親を風呂場で殺すシーンも追加されています。その後、ペニーワイズにつかまり、アジトに連れていかれるという流れも、前作から変更されている点です。

個人的に一番残念な変更は、大人になった主人公たちが前編では出てこないことです。前作は、前編の話は、大人になった主人公たちの回想として描かれていいましたが、今回は前編子供の時の話のみになっています。前作の方が、全体を通して、あくまでも大人の主人公たちに主軸が置かれていて、過去と現在の対比を映画の中で描くことで、より映画のシナリオを熱いものにしていたように思います。そのため、個人的には、この変更は少し残念です。

映画の最後は、ペニーワイズを一時的に撃退した後、「再び立ち向かおう」という誓いをたてたところで終わります。


<最後に>
いろいろ、前作と比較して、個人的にはやっぱり前作の方が好きです。でも、そこまで悪い出来の映画ではないので、日本では11月3日公開ですが、ぜひ映画館に足を運び、そのうえで、前作と自分なりに比較するのが面白いかもしれません。

(あと、一つ言えることは、この映画の監督はロリコンだということでしょうか...。)