2009年5月18日月曜日

Phantom 〜Requiem for the Phantom〜 第七話「過去」

[アニメ感想]Phantom 〜Requiem for the Phantom〜 第7話「過去」


前回までと違い再び原作シナリオの展開に戻りました。


クロウディアの陰謀、そして、ツヴァイの失われた過去の記憶がよみがえる。


第7話は1章の後半に入るあたりのお話、クロウディアの陰謀が動き出します。

原作どおり高速道路のドライブインで梧桐たちとの密会のため、クロウディアがツヴァイにフェラーリを運転させ激走するシーンがありましたが、原作ほど長々としたものではありませんでした。原作はこのシーンがやたら長かったような気がします。

梧桐と志賀がしゃべりましたが、どうも声に違和感を感じる。梧桐は若すぎるし、志賀にホッシーをあてるのはなんか合わない気が。「へい」っていう台詞が(笑)

今回も前回と同様、独特な演出は少なかったです。

電車がトンネルに入って行き、そこからツヴァイの夢の中の過去のシーンに入っていくシーンの切り替えは、まあ、映画などではよくある表現ですが、アニメでやるのは面白いと思います。

このシーンの前にツヴァイがフェラーリを運転しながら満足げに微笑を浮かべていますが、自分自身で車を運転し進むツヴァイと、電車に乗せられていくアインの対比が面白いです。二つの乗り物の違いを生かした演出です。

アインの夢のシーンで描かれた風で葉が飛んでいるシーンはMADLAXを意識したのだろうか。また、このシーンで二人が線路の上を歩いている描写は何か他の映画であったのではないかと思います。夢の回想がアインの冷たい一言で急に終わり、「確かめにいきたいと思わないのか」というツヴァイの言葉に対して「そこに私たちの居場所なんてない」と切り捨てるアイン。過去への道しるべになるかもしれない夢。しかし、もはや後戻りはできない二人。そして、自分が面白いと思ったのは、このシーンの終わりで二人が歩いている線路の先が途切れていることです。過去にも戻れない二人、しかし、未来もないということの暗示なのではないかと自分は思います。線路というのはしばしば人の人生に喩えられるようです。

線路の描写はノワールでもありました。第18話「私の闇」でご機嫌斜めなミレイユと霧香が喧嘩をしてしまう話です。ミレイユに「消えて」と言われ別れた霧香は一人で線路をとぼとぼと歩いています。その線路の片方だけが途切れていて「いつも、二本とは限らない…(ぼそっ)」という霧香の台詞。この表現は凝っていて面白いです。また、この喧嘩の原因は三人の三角関係によるものですが、ファントムではアイン、ツヴァイ、クロウディアという三角関係が出来上がりつつあります。今回の冒頭部分でもクロウディアにツヴァイをとられ不機嫌なアインが描かれています。

こういう風に背景でシーンやキャラクターの心情を描くのはテキスト原作のアニメでは重要になってくるような気がします。原作では背景がめまぐるしく変わるわけではないので、それをアニメ化する場合にはキャラクターたちが今、どこにいるのか、例えば原作で駅のシーンが出てきた場合、それをアニメにするにはキャラクターたちは実際には駅のどこにいるのか?改札口前なのか改札口周辺なのか、それともホームにいるのかといった細かい場所の設定をしなければならないと思います。その場合に場所を選ぶ基準ができると思います。どうして、その場所を選んだのか?そういうバックの部分を想像してみるとクリエイター側の演出意図が見えてくる気がします。

今回残念だったのは、作画がところどころ崩れていたところでしょうか。

第1章もいよいよ終盤に差し掛かってきました、来週も楽しみです。





2 件のコメント:

  1. 乗り物の違いを生かした演出・・・
    言われてみれば確かにおもしろいですね!
    線路を人生に喩える手法が名シーンに
    あげられるケースもありますよね。
    メジャーなアニメでは「千と千尋」とか。
    Noirの場合はセリフが他のアニメに比べて
    極端に少ない分、こうした演出が特に効果的に
    使われている(音楽と共に)のが好きです。
    真下監督の作品は、総じてどうでもいい
    バックを使わない作品が多いのでしょうね。
    今回も解説ありがとうございました!!

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  2. コメントありがとうございます。
    ファントムではスタッフがひとつひとつしっかりとした演出意図を持って作品を描いているのが伝わってくるような気がします。
    久しぶりに考察しがいのある作品に出会った気がします。

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