あのエイリアン1の監督を手掛けたリドリー・スコット監督がプロメテウスに引き続きメガフォンを握ったエイリアン:コヴェナント(原題: Alien: Covenant)!フランスで最速上映されたので見てきました(5月10日公開初日)。
まず、はじめに以前自分は↓こちらの記事で予告編の動画を見て、この映画とリドリー・スコット監督に対して、いろいろとネガティブな感想を書きました。
http://kiritannponabebenthos.blogspot.fr/2017/03/blog-post_2.html
ですが、映画を見て...
リドリー・スコット監督、まじですみませんでした!映画面白かったです!素人が分かったような口を聞いてしまい、すみませんでした!!あんた、やっぱり巨匠だよ!!
なぜ自分がそう思ったのか、そして、この映画の見どころについて、ネタバレのないように書きます。
ポイント1 監督にとってエイリアンなんてどうでもいい
「ティザームービーでエイリアン見せすぎ、こいつ分かってねえよ!」と思ったことについて...。なるほど、これは「エイリアンなんてどうでもいいよ、過去の遺産に俺は頼らず、違うもので魅せるぜ!」という監督からのメッセージだったんですね!今回の、ポイントはチープなCGで作ったエイリアンじゃないんですよ。その代わりに、今回、監督は「羊たちの沈黙」のレクター博士のような怪物的なキャラクターと登場させています。
ポイント2 この映画はプロメテウス2である
この映画はやっぱりプロメテウスの続編なんですよ。創造の物語です。元のエイリアンシリーズにより繋がるように作られていますが、内容的にはプロメテウス2という感じです。前作よりも、もう少し分かりやすい内容になっています。徐々に監督の意図が分かってきた気がします。映画を見て、エイリアンシリーズというより、エイリアンシリーズに繋がるけど、また別のオリジナルの映画シリーズとして作成された作品として楽しめると感じました。
ポイント3 いろいろなクリーチャーが出てくる
前作のラストにプロトエイリアンなるものが出てきましたが、今回は、もう少しいろいろなタイプのクリーチャーが出てきます。エイリアンの卵やフェイスハガー、チェストバスター、ビッグチャップといったおなじみのクリーチャーも出てきます。ただ、ティザームービーに出ているように、前作のエイリアンと比べ、あまりに動きが早く、どちらかというとエイリアン4のアクアエイリアン的な感じです。
ポイント4 エイリアンの誕生秘話が明かされる
前作のプロトエイリアンとは異なり、今回はエイリアンシリーズに登場するエイリアンが登場します。なぜ、エイリアンが生まれたのか?その誕生秘話が今回の映画で明かされます。
ポイント5 これはSFホラーと見せかけたサスペンス映画
ネタバレを避けるため、この記事の序盤では詳しくは書けませんが、この映画はどちらかというとSFホラー映画というよりはサスペンス映画に近いです。狂気のマッドサイエンティストが登場します...。
ポイント6エイリアン1のBGMや過去作品へのオマージュ
劇中ではエイリアン1作目のBGMがところどころに使われています。OPから、あの懐かしのBGMが流れ、「エイリアンが始まった!」と観客に感じさせてくれます。また、宇宙船内でエイリアンを追い詰めるシーンはエイリアン1を彷彿させてくれます。ただ、そこまで、あからさまにオマージュシーンを押し出しているというわけでもないのがポイントです。AVP2ではあまりに過去作品へのオマージュが多すぎました。たしかに、ファンとしてはうれしいのですが、あまりにあからさまに入れすぎると、逆に新作映画そのもののオリジナル性を破壊しかねないのですよ。AVP2は若干破壊しかけていたような気がします。
ポイント7宇宙船デザイン
さすがリドリースコット。過去の作品でもハイクオリティな模型で、存在感のある宇宙船を作中で登場させていましたが、今回はCGで描いたリアルな宇宙船が登場します。この辺は監督がずっと拘って作ってきているポイントかなと思います。
ポイント8 物語は前作から10年後を舞台にしている
前作ではショウ博士とデヴェッドが創造主たちの惑星に向かうところで終わりますが、今回のお話はその10年後を舞台にしています。
ポイント9 バッドエンド
若干ネタバレですが、バッドエンドで終わります。最後は思わず、観客をにやりとさせる内容で終わります。
あとは、前作のショウ博士がどうなったのかとか、ティザー・ムービーに登場したローブの人物は誰なのか(Wikipediaにいきなりネタバレが書かれているので注意)?とか、創造主の惑星で何が起こったのか?コヴェナント号にいるデイビットそっくりなアンドロイドはデヴィッドなのか?とか、その辺の内容は劇場で映画を見て確認してください。
ちなみにティザームービーであった、最後の晩餐的シーンとアンドロイドの製造シーンは映画本編ではカットされています。
最後に~エンディングロールにて~
ちなみに、これまでフランスで何回か映画を見て、今回気づいたことがあります。
基本的にフランスではエンディングロールになるとみんな立って出て行ってしまうのですが、毎回数人くらいはエンディングロールの最後まで見るんですよね。でも、こういう人達って、メガネをかけてひょろっとした感じの見た目だったり、小太りの人だったり、そして共通して服装がダサかったりと...
はい、お仲間です...。
エンディングロールまで見る人って、完全にオタク系の人ばかりだということに気づきました。自分も含めて!去り行くフランス人には「こいつらキモイ」と思われているのかもしれません...。実際、そうですけどね!
今日は自分以外に、一人の青年だけがエンディングロールを最後まで見ていました(元々、劇場はガラガラだった)。自分も彼も周りの去り行く人々をきょろきょろと見て「自分もみんなと同じように出るべきなんじゃないかという」という葛藤と闘い、そして、掃除のおばちゃんの「おまえら早く出て行けよ!」っていう無言のプレッシャーを肩に感じながら、エンディングロールまでしっかり見ました。
フランス人オタク青年の健闘を称え、『フランスの青年よ、大丈夫だ俺が付いているぜ!俺だけはおまえの見方だ』と心の中でエールを送っちゃいました。
まあ、周りがどういうふうに行動しようが、どうでもいいんですけどね。自分は、自分の好きなようにしか行動しない人間なので。
でも、フランス人よ。本当にエンディングロールで立っていいのか?劇中のBGMを映画の音量で聞ける最後のチャンスなんだぜ?それに、もしかしたら、エンディングの後に何か上映されるかもしれないぞ??おまえら損しているかもしれないんだからな?
エイリアン:コヴェナントは日本では9月から上映開始らしいです。ぜひ、皆さん劇場に足を運ばれてはいかがでしょうか?
<注意:ここからネタバレあり>
上記以外の点で、作中で印象的だった点について書きたいと思います。ネタバレを多分に含みます。
デヴィッドについて
前作で登場したアンドロイド、デヴィッドですがなぜか前作以上に人間っぽくなっているのが印象的でした。より感情豊かで、声の感じも普通の人間のようです。それが特にコヴェナント号のアンドロイド ウォルターと比較され、際立っている気がします。その一方でサイコパスな雰囲気を漂わせていて、羊たちの沈黙のレクター博士の様で怖いです。次の瞬間に何をするのか分からないというキャラクターが本作の一番の見どころなのかもしれません。エイリアンはあくまでもサイコパスでマッドサイエンティストのデヴィッドの傑作としての立ち位置なのです。1作目のエイリアンとは違う恐怖です。
Ozymandiasの引用についての考察
物語の中で、デヴィッドがOzymandiasの一節を引用するシーンが何度も出てきます。
I met a traveller from an antique land
Who said: Two vast and trunkless legs of stone Stand in the desert. Near them, on the sand, Half sunk, a shattered visage lies, whose frown, And wrinkled lip, and sneer of cold command, Tell that its sculptor well those passions read Which yet survive, stamped on these lifeless things, The hand that mocked them and the heart that fed: And on the pedestal these words appear: 'My name is Ozymandias, king of kings: Look on my works, ye Mighty, and despair!' Nothing beside remains. Round the decay Of that colossal wreck, boundless and bare The lone and level sands stretch far away |
オジマンディアスは生前、傲慢な王で様々なものを作り出しました。まさに神のように。しかし、結局のところ、最後にはすべて衰退してしまうのです。この一節は方丈記にあるように、無常観を語った詩なのだと解釈しています。神に対しても、同じ運命が待ち受けているぞというメッセージなのでしょう。
このセリフを言いながら、デヴィッドは創造主たちの都市に向かって、あの黒いツボを投下させ、都市を破壊し創造主たちを虐殺します。オジマンディアスが経験した栄枯盛衰を、創造主たちにも見せたかったのでしょうか。衰退した彼らの文明を無理やり終わらせる形で。
エイリアン:コヴェナントの元のタイトルが「Paradise Lost」だったことを考えると、このあたりにリドリー・スコットが描きたかったものがあるのかもしれません。クリエイティブの一側面として「ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」、「破壊と新生」というのがキーワードなのかもしれません。
創造主たちの文明を破壊した後に、自分自身の新たな創造を始めるというのがデヴィッドの目的だったのだと思います。
最後のシーン
デヴィッドとウォルターが戦闘した末、ウォルターに組み伏せられたデヴィッドがこっそりナイフを手に取っているシーンで何となく後の展開が予測できていましたが、最後のシーンはギャーってなりました。女主人公のダニエルズが低温睡眠カプセルに入れられたときに、ウォルターに扮したデヴィッドに、過去に自分が話した湖のことについて話したシーンです。当然、湖のことなんて知らないデヴィッド。ここで、ダニエルズはデヴィッドウォルターが入れ替わっていることに気づき、カプセルの中で絶望して低温睡眠に入るところで終わります。完全にサスペンスだよ!
そして、フェイスハガーの胚を体内に飲み込んで宇宙船内に持ち込んだデヴィッドは、それを再び吐き出します。このシーンも「えー!」って感じで、強烈な印象を受けました。狂気を感じます。本作では、デヴィッドはマッドサイエンティストとしていい感じの味を出したキャラになっています。
そして、デヴィットは他の人類の胚と一緒にエイリアン胚を保存し、当初の目的地である惑星Origae-6に向かうところで物語は幕を閉じます。続編が気になる内容です。
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